11月12日に、ゲーム音楽の管弦楽団
「MUSICエンジン」の第一回演奏会が開催されたので、行ってきました。
会場は、三鷹市芸術文化センター 風のホール。
14:00に開演し、15:45頃に終演しました。
今回のプログラムは、オール・エストポリス伝記II(以下、エストII)。
一般的にはマイナーかもしれないけれど、一時はそのOSTに5桁のプレミア価格が付いていた(その後、2006年にI, II, よみがえる伝説のBGMを網羅したOSTが発売されたら落ち着いた)という、知る人ぞ知るゲームタイトルです。
ゲーム自体も、一部でとても評判の高いタイトルです。
と力説してみたはいいものの、自分自身のエストIIへの思い入れは、正直あるようなないような?
なんとも複雑な経緯があったりします。
エストポリス伝記はIもIIもゲーム雑誌に掲載されていた記事から存在は知っていましたし、いい感じに厨二心をくすぐられてプレイしてみたいと興味を魅かれたゲームでした。
が、当時ゲーム禁止の実家住まいだったので、プレイすることは叶わず。
抑圧された結果、雑誌記事ばかりをひたすら読み込みまくってこじらせた、という過去があったりなかったり。
で、その後幸いにしてゲーム自体をプレイする機会に恵まれたのですが、実は途中で挫折しました。
Iはクリアしたのですが、IIは途中で止めてしまった覚えがあります。
それと同じ頃にBGMの評判を耳にしていたので、曲だけでも聴いてみたいと思いはしたものの、OSTの価格が高騰していてとても手の出せる金額ではありませんでした。
しばらく悶々とする日々が続いていたのですが、2006年についに再販盤が発売されて購入。
そのため、OSTで曲は一通り耳にしたことがあります。
が、曲自体はそれほど強く印象に残らなくて。
「うん、普通にゲーム音楽だ」とさらっと聴き流してスルーしてしまいました。
そんな体たらくなのに、今回の演奏会に足を運ぼうと思った理由は・・・何なんでしょう?
自分でもよくわかりませんが、曲に対する評価の高さが気になったことと、実家住まいのときに妙な方向へこじらせたことが、たぶん影響したのではないかと。
気が付いたら、チケットを確保していました。
今回の演奏会を機に予習を兼ねて改めてOSTを聴き直したのですが、じっくり聴いてみると結構良い曲が多いことに気付きました。
特にバトル曲が総じて格好良くて、「なんだこれ、なんで俺スルーしちゃったんだろう」と不思議に思ったくらい。
今回の演奏会がなかったら、エストIIの曲を聴き直すことはなかっただろうし、格好良いバトル曲に気付くこともなかったかもしれないと考えると、良いキッカケを与えてくれたMUSICエンジンに感謝したい気持ちがあります。
とはいえ、ゲームは中途半端、曲に対してそれほど強い思い入れもない、単にこじらせただけの自分が演奏会に足を運んだところでついていけるかどうか、開演前までは不安しかありませんでした。
あまりに不安が強かったので、少しでも楽しむことができればそれでいいか、と思い込むことで、気持ちを演奏会へ強引に向かわせたような気がします。
そんな事情もあって、当初はブログに感想を投下するつもりもありませんでした。
それが一転して、こうして感想を書きたいと思えたのは、ひとえに演奏が素晴らしかったから。
なんというか、むちゃくちゃ格好良くて、本当に楽しかったのです。
予習として原曲を一通り聴き込んでいたものの、ゲーム内容についての知識はほぼ皆無の自分でしたが、まさかこんなに楽しめるとは思っていませんでした。
ついていけるか不安とか、期待してないとか、散々なことを思っていた半日前の自分を殴りたい気分です。
楽器構成は管弦楽。
といっても管楽器はフルート・オーボエ・トランペットのみと少なめ。
他は、弦楽器4種とエレキギター、打楽器(ピアノ、ドラムセット含む)。
総勢20人ほどの中規模な構成でした。
編曲の程度は、かなりの原曲重視。
いや、「重視」というよりも「忠実」と言った方が正しいかもしれません。
楽器演奏に落とし込む上で必要なアレンジがあったり、数ループ演奏する曲はちょこっと展開に工夫を入れるなど、所々に強いアレンジが見られたものの、それはごくわずか。
全体の9割はほぼ原曲再現だったと思います。
それでいて、生演奏という強みを生かして緩急やメリハリを明確に付けることで、原曲よりもよりドラマティックになっていた印象を受けました。
もしエストIIがPS4あたりに移植されて音源が生録になったら、きっとこうなるんじゃないかな、という感じの編曲でした。
それほど原曲に忠実だったので、原曲との違和感はほぼありません。
違和感の入り込む余地がないくらいの再現度でした。
あまりに原曲に忠実だったので、開演してすぐの頃は不安が更に強くなったのですが、2曲目あたりであっさり解消されました。
ゲームを知らなくても十分に曲を楽しめるくらい、演奏が素晴らしかったし、曲も素晴らしかったです。
むしろ、ゲームを知らないからこそ、純粋に曲を楽しめたかもしれません。
感覚的には、絵や物語の付いていないクラシック音楽を聴いているときと似た感じです。
「なんかこの曲、聴いてて気持ちいいなぁ」とか「なにこの曲、超たぎる!」とか、完全にゲームと切り離して、音を鑑賞していました。
それを許容できるくらい、一つ一つの曲が曲として独り立ちできていた、ということかもしれません。
それと、曲名がわかりやすく想像しやすいのも、置いてけぼりを食らわずに済んだ要因だったかも。
「大地」⇒フィールド曲かな、「バトル#X」⇒どう見てもバトル曲です、「洞窟」「迷宮」⇒汎用ダンジョン曲かな、「蒼海」⇒海上に出たときの曲?、「未来へ」⇒曲順的にエンディングかな、などなど、RPG好きにとってはとてもわかりやすい。
曲の雰囲気だけでなく曲名からも容易にあれこれ想像できて、自分の中でイメージを補完できたのも、純粋に楽しめた一因でした。
演奏は、どの曲も音の響きや流れが綺麗で格好良くて、ひたすら聴き惚れていました。
全体的に、演奏技術力がハイレベル。
トランペットは主に高音域で限界に挑戦して失敗していたことが多かったように感じましたが、でもここぞというところではしっかりと音を支えていて、些細なミスが気にならなくなるぐらい格好良かったです。
まぁ、演奏技術力が高いのは、演奏者一覧を見て納得でしたが。
別の楽団(Melodies of Crystalなど)で活躍されている方が何人か登壇されていて、そりゃ演奏上手いわけだとしみじみ実感。
誰が参加されているとか前情報無しにパンフレットの演奏者一覧を見たので、「え、え、何この豪華なメンバー」と軽く混乱したりもしましたが。
話は変わって、開演前のプレトークについて。
当初、エストIIのBGMを担当された塩生康範氏だけが登壇される予定だったところ、開催前日に急遽、ディレクターの宮田正英氏、開発元のネバーランドカンパニーに所属されていたサウンドの中島亨生氏の登壇も決定。
3人でエストシリーズの開発裏話をされていました。
エストポリス伝記は、そもそもPC98で制作されていた作品だったとのこと。
宮田氏が独立して間もなく、4, 5人で集まってRPG作りたいという話になり、PC98でプロトタイプを開発して売り込みを行っていたそうです。
そうしたところ、開発が正式に決まったときに「SFCで出さないか」という話になって、SFC用のゲームとして開発された、という経緯を語られていました。
ちなみに、プロトタイプ版は音楽も含めて全部破棄されたそうです。
曲制作にあたって、宮田氏から塩生氏へ渡されたBGMに関する仕様書がひどいものだったそうで。
「街」とか「村」とかしか書かれていなくて、「これは仕様書じゃない、曲リストだ!」とクレームを入れたという話をされていました。
エンディング曲に至っては「泣ける曲」としか指定されていなかったとか。それはひどいw
その他にも、昔のゲーム開発現場あるある的な、赤裸々な裏話を楽しそうに披露されていました。
結構濃い話も多くて、理解が追い付かない部分もありましたが、興味深く面白い話でした。
というわけで。
エストIIの曲の良さが十二分に引き出された今回の演奏会。
感想を端的に言えば、どの曲もめちゃくちゃ格好良かったです。
すっごく、格好良かったです。
本当に、格好良かったです。
大事なことなので、何度でも言えます。めちゃくちゃ格好良かっt(以下エンドレス
開演前はゲーム知らないからと不安に思っていましたけれど、まさかこんなに心を鷲掴みにされるとは思いもしませんでした。
個人的には、ものすごく満足しましたし、満足以上のものをもらった演奏会でした。
世の中には、自分の知らない良い曲・良い演奏が、まだまだたくさんあるんだなぁ。
「ゲーム知らないから」の一言で切り捨てるのは勿体ないということを、今回の演奏会を通じてしみじみ実感しました。
第二回演奏会の日程は既に決まっているそうです。
2017年4月1日に開催予定で、演奏曲目は「ルドラの秘宝」他、とのこと。
アンケート用紙に「MUSICエンジンで聴きたい曲」を記入する欄があったので「ルドラの秘宝」を含むいくつかのゲームタイトルを書き込んだら、早速1つ叶いそうです。
あとは、スケジュールを死守せねば。
これより下の追記部分は、今回の演奏会のセットリストと曲ごとの感想になります。
本文書く前に追記部分を先に書いたら、なんだか「格好良い」を連呼する感想になってしまいました。
読み直して「語彙力とは・・・」と思わずにはいられませんでしたが、でも格好良かったのだから仕方ないじゃないか、と開き直ることにしました(←今ココ