[GMEV] 逆転裁判15周年記念 オーケストラコンサート

5月6日に、「逆転裁判」シリーズの楽曲を演奏するオーケストラコンサート「逆転裁判15周年記念 オーケストラコンサート」が開催されました。
昼公演と夜公演の2回開催されたのですが、そのうち夜公演に行ってきたので、その感想を記します。
会場は、東京文化会館 大ホール。
18:30に開演し、20:50頃に終演しました。

■2008年以来9年ぶりでシリーズ勢揃いのオーケストラコンサート
逆転裁判のオーケストラコンサートは、今回が初ではありません。
2008年の春と秋に2回開催されています。
ただ、それ以来なぜか一度も開催されなかったため、今回のコンサートは実に9年ぶりということになります。
9年ぶりという月日の長さと、その9年間に一度も開催されなかったことに、改めて驚きを禁じ得ませんでした。

9年ぶりということもあり、その長い月日の間に「逆転裁判」シリーズ作品はいくつも発売されました。
5や6の他に、スピンオフ作品である「逆転検事」シリーズや「大逆転裁判」もありました。
今回の演奏会ではそれらが一堂に会して、満遍なく演奏されました。

なお、演奏と指揮は9年前のコンサートと同じで、東京フィルハーモニー交響楽団と栗田博文氏でした。

■編曲は岩垂徳行さんが担当
今回演奏された曲は、全て岩垂徳行さんが改めて編曲し直したものだそうです。
オーケストラアルバムなどで発表済みの曲も、今回用に改めて編曲されていました。
とはいえ、既にオーケストレーションされている曲については、その大部分を残したまま、少しだけオリジナルフレーズや音を追加した程度。
確かに新たに編曲し直されていることは明白でしたが、さりとて全く別物になっていたわけでもなく。
その既存のものを生かしたブラッシュアップ加減が絶妙で、今回のアレンジにも好感が持てました。

5や6、「逆転検事」、「大逆転裁判」など2008年のコンサート以降に発売されたゲームの曲については、今回オーケストレーション化されて披露されました。
5は昼の部のみの演目だったため夜の部では聴けなかったのですが、6や「逆転検事」「大逆転裁判」の組曲はようやく聴けたという感慨がありました。
特に「大逆転裁判」のOSTが好きなので、やっとオーケストレーションされたと非常に嬉しく思いました。

今回、岩垂徳行さんがゲストとして登壇されることはなかったのですが、ぜひ編曲の意図を伺いたかったです。
まぁ、真裏の東京ゲームタクトの方に参加されていたから、仕方ありませんが。

■とにかく重厚で勇壮で熱い演奏の数々
演奏は、どの曲もとても熱く格好良かったです。
9年前のコンサートで演奏された曲はもちろんのこと、今回初めてオーケストラで演奏された曲もとても良かったです。
ゲーム内の手に汗握るたぎる展開を彷彿とさせるような、熱い演奏でした。
夜の部だけとはいえ、鑑賞に来られて本当に良かったです。

鑑賞前は、自分都合によりあまり楽しめないかもと思っていました。
前日のニーアコンサートの余韻を引きずっていたことと、5月3日から4日連続で演奏会に行っていて疲労がピークだったこと、その上当日昼に別件の演奏会に行っていたことが重なり、存分に楽しめるほどHPに余裕がなかったのです。
そんなわけで、実は当初レビューを投下する予定はありませんでした。
体力的に書いている余裕はないだろうなぁ、と思っていたので。
それが一転して書きたいと思えたのは、ひとえに今回の演奏会が楽しかったからに他なりません。
実際にコンサートが始まったら、蓄積していた疲労や何やらがあっという間に吹っ飛びました。
逆にエネルギーをもらったような気さえします。

5日のニーアコンサートは切なさが大爆発していたけれど、今回の逆転裁判の方は楽しさが大爆発していました。
それぞれ別ベクトルで良かったのも、前日のコンサートを引きずらずに、こちらはこちらで純粋に楽しめた要因だったかもしれません。
こんなに楽しいのなら、昼の部も行っておけば良かったなぁと、終演後に軽く後悔しました。
昼の部のチケットも確保しておきながら、別件を優先して行かなかっただけに、余計に後悔が強かったです。

演奏中、ステージ上のスクリーンには、曲に合わせてゲームのプレイ動画が流れていました。
が、自分の座席が最前列だったためスクリーンを見上げる格好になり、ずっと見上げていると首が痛いことと、映像のフラッシュが目に痛くて見続けていると頭痛がするという事情により、映像はほとんど視界の外に追いやっていました。
曲が変わったときにチラッと、どんなシーンの曲に移行したのかを確認するために見たぐらいなので、具体的にどんなシーンが流れたのかは把握できませんでした。

■面白おかしい掛け合いカゲアナ&トーク
開演前に、成歩堂と御剣のとても楽しいカゲアナが入りました。
台本は、今回のために山崎Dが書き下ろしたもの。
結構長いカゲアナで、10分ぐらいかけてやっていました。

一応台本があったものの、蓋を開けてみたらかなりアドリブの入ったものになったそうです。
演出の都合により非常口の目印を消灯するから、今のうちに指を指して「ここだ!」と確認するように、という流れ以降、御剣の指示により観客にもそれを強要するという下りはアドリブだったそうです。
大きな声で「ここだ!」をしない限り何度でもやり続けると言われてしまったので、2回目で多くの人が「ここだ!」と叫んでいました。

また、成歩堂が途中で台詞を噛んでしまい、観客席から拍手が沸き起こっていました。
どうやら昼の部でも噛んでいたそうです。
近藤さん、ドンマイ。

演奏会中のゲストトークは、計3回ありました。

1回目のトークは、2曲目と3曲目の間。
ゲストとして、成歩堂龍一役の近藤孝行さんと、御剣伶侍役の竹本英史さんが登場されました。
登場早々に観客席がざわついていたのは、どうやら竹本さんの衣装が昼の部から変わっていたためだった様子。
近藤さんはややラフな黒のフォーマルスーツに対し、竹本さんはがっちりした白の正装でした。
昼の部は、一体どんな衣装だったのだろう。

近藤さんが終始素であったことに対して、竹本さんは終始御剣モードでトークされていました。
あの御剣の尊大な感じをずっと維持していました。
3回目のトークで「僕たちがキャラを引っ張っているのか、キャラに僕たちが引っ張られているのか」と近藤さんが仰られていましたが、ここでの竹本さんに関しては明らかに後者だったと思います。

トークは非常にフリーダムでした。
開演前に成歩堂と御剣のカゲアナがあったのですが、そこで近藤さんが噛んでしまったことを、この1回目のトークでひたすら謝罪していました。
個人的にはそこまで謝らなくてもいいのにと思ったり。むしろ、我々の業界ではご褒美です。

竹本さんは、物販にあったクラッチバッグを持参していました。
そしてそのバッグに話を振られると、バッグの正しい使い方についてレクチャーを始めました。
まずジッパーを開けて、中のものを取り出す。そこで出てきたのは、指揮棒という名のボールペン。
「次の曲はこれで指揮するから」と、栗田さんが逆に登場し難くなるような発言を、御剣口調でされていました。
# 実際には、次の曲は正規の指揮棒で指揮されました。そりゃそうだ。

2回目のトークは、第2部開始直後。
ゲストとして、「逆転裁判」シリーズのプロデューサーである江城元秀氏と、「大逆転裁判」の音楽を担当された北川保昌氏が登場。
「大逆転裁判」の音楽にまつわる制作秘話を披露されていました。

「大逆転裁判」の曲は、小物の音色を重要視して制作しているそうです。
オルゴールの一音一音やベルの音は、実際に鳴らしてそれをマイクで録音し、サンプリングして楽曲に取り入れていていると語られていました。

また、ディレクターの巧舟氏の要求が高く、成歩堂龍ノ介のテーマは17回もリテイクしたそうです。
話によると、6番目のものを作り直して12番目として提出し、それをさらに修正したものが最終形として採用されたとのこと。
「大逆転裁判2」でもやはり巧氏の要求が厳しくて、「その曲にアイデンティティはあるのか」と何度も指摘されているらしいです。

「大逆転裁判2」ではタップダンスの実際の音が取り入れられる予定だそうです。
その音の収録時の模様が、映像で公開されました。
音と同時にダンス時の人の動きもモーションキャプチャーで撮影していました。
かなり本格的なタップダンスで、音もダンスの動きもゲーム内でどのように使われるのか気になります。
ただ、実際にタップダンスを使う予定の曲は巧氏のOKがまだ出ていないそうで、本採用されるかどうかは未定と不穏なことを仰っていました。

3回目のトークは、本編最後の曲の前。
近藤さんと竹本さん、江城Pが登場されました。
各人から一言ずつコメントということで、トップバッターとして近藤さんに話を振られた途端、竹本さんがゴドーの曲の話をし始めていました。
近藤さんと竹本さんがステージ脇で演奏を聴いていて、ゴドーの曲が始まった途端に2人揃って「きたー・・・・」と同じ感嘆の声を漏らしたそうです。
ひたすら、ゴドーの演奏を絶賛されていました。

ちなみに、竹本さんは御剣のテーマ曲も絶賛していました。
ありとあらゆる美辞麗句を並べていて、さすがに近藤さんにツッコミを入れられていました。

なお、サプライズ情報は特にありませんでした。
「大逆転裁判2」の既出情報が改めてアナウンスされた程度です。

■〆は恒例の「異議あり!」
演奏会の最後の〆は、観客を含めた全員による「異議あり!」。
逆転裁判と言えば、これしかありません。
近藤さんの掛け声に合わせて「異議あり!」が叫ばれました。

逆転裁判のイベントの〆は大体これなのですが、これまでは気恥ずかしさであまりビシッとできないでいました。
ところが、今回はオーラスの曲で緊張が取れたからか、トークの掛け合いが楽しかったからか、はたまた最後の最後で近藤さんがまた噛んだからなのか、一番気持ちよく「異議あり!」を言えたような気がしました。

■感想まとめ
即興の小ネタがあちこちにあり、熱い演奏はもちろんのこと、トークも大盛り上がりで非常に楽しい演奏会でした。
ナンバリングタイトルだけでなく、「逆転検事」や「大逆転裁判」」まで網羅的に演奏してくれた点も、好感度の高いポイントです。
個人的な欲を言えば「王泥喜法介 ~新章開廷!」が聴きたかったところですが、今回の選曲も大満足でした。
ぜひ、次回の演奏会も期待したいです。
とはいえ、さすがに9年も待つのは長いので、せめて遅くとも5年後の20周年に開催してほしいです。

あと、昼の部でしか演奏されなかった曲が聴きたいので、ぜひ音源化をお願いしたいです。
「感動的だった」という「綾里真宵 ~逆転姉妹のテーマ」がすごく気になります。


これより下の追記は、今回の演奏会のセットリストと、印象に残った曲ごとの感想になります。


セットリストは次の通りです。
昼公演と夜公演でセットリストが異なるようですが、こちらは夜公演のものになります。
-----
[第1部]
01. 成歩堂龍一 ~異議あり!
02. 逆転裁判6 法廷組曲
03. 逆転検事 巡り会い組曲
04. 逆転検事組曲 華麗なる軌跡

[第2部]
05. 大逆転裁判組曲
06. ゴドー ~珈琲は闇色の薫り
07. 大いなる復活 ~御剣怜侍
08. 逆転裁判4 法廷組曲

[アンコール]
09. 続・大逆転裁判組曲
10. 大江戸戦士トノサマン
-----

これより下は、印象に残った曲ごとの感想になります。

01. 成歩堂龍一 ~異議あり!
既存のオーケストレーション化されたバージョンよりも、メドレーに含まれていた曲の数が増えていました。
終盤に「なんか、新しい曲が追加されてる!」と驚きました。
どうやら、6の「成歩堂龍一 ~ 異議あり!」なども追加されていたらしいです。
また、1と2の曲の繋ぎが既存アレンジと変わっていたりと、軽く編曲されていました。
ただ、「成歩堂龍一 ~異議あり!」の勇ましさは編曲されていても変わっていなくて、冒頭から熱い演奏でたぎりました。

02. 逆転裁判6 法廷組曲
5の法廷組曲は2年ほど前に某コンサートで聴いたことがありますが、6の法廷組曲は初かもしれません。
他の法廷組曲よりも多くの曲がメドレーに含まれていたように感じました。
中には、法廷パートではなく捜査パートで流れる曲もちらほらあったような。

「尋問 ~ アレグロ 2016」などのような比較的落ち着いた曲や、他の明るい曲によるメドレーの後、突然の「待った!」「ポルクンカ!」「サトラ!」に続いた奏者と指揮が一体となった大迫力の「異議あり!」。
「ポルクンカ!」では笑いが、「サトラ!」ではどよめきが起こり、「異議あり!」では拍手が沸き起こりました。
さらに栗田さんがそれを煽り、拍手が最高潮に達したところで「追求 ~ 追いつめあって」に突入。
ここの流れがものすごく格好良くて熱かったです。

それにしても、栗田さんの煽りの場慣れ感といったらもう。
さすが、これまで各種のゲーム音楽コンサートの指揮をされているだけのことはあります。

03. 逆転検事 巡り会い組曲
一条三雲、ロウ捜査官、水鏡裁判官、一柳検事、信楽弁護士、御剣信さんのテーマ曲のメドレーでした。
ロウ捜査官と信楽さんのところで入ったサックス、御剣信さんのピアノの音色が、各キャラクターのイメージにぴったりと合っていて、趣きが感じられてしみじみしました。
欲を言えば、水鏡裁判官の曲は厳かな曲だけあって、パイプオルガンが欲しかったかも。
ここがパイプオルガンのあるホールだったらなぁ、と頭の片隅に少しだけ思いました。

05. 大逆転裁判組曲
そもそもの原曲が弦楽器をベースとしたオーケストラっぽいものなので、相性悪いわけがありませんでした。
古色蒼然とした原曲の良さが、コンサートにおいても引き出されていました。

「逆転裁判」のナンバリングタイトルや「逆転検事」シリーズの曲に比べ、チューバやチェロなどの低音が厚い曲になっていました。
意外と、アクセント的に使われていたチューバの印象が強く残りました。
特に主旋律を奏でていたわけではなかったと思うのですが、重厚な存在感を放っていました。
この重厚感で他のタイトルと差別化し、アイデンティティを出していたのでしょうか。

なお、アコーディオンが入っていたことには、この曲の演奏後の紹介で初めて気付きました。

06. ゴドー ~珈琲は闇色の薫り
3回目のトーク時に竹本さんと近藤さんが絶賛されていた通り、とても渋くて熱い演奏でした。
もうサックスが格好良すぎて、サックス無双状態。
2ループ目のカデンツァも格好良くて、これは惚れないわけにはいきません。
ゴドーといえばサックス、といわんばかりの相性の良さでした。

07. 大いなる復活 ~御剣怜侍
「逆転裁判」版の御剣のテーマ。
照明によりステージ上が赤で染まっていたのですが、赤が非常に似合う演奏でした。
知的で冷静な論理性をちらつかせつつ、全体的には重厚で熱い曲で、まさに紅の曲。
既存のアレンジ版よりも中間部の静かなところがやや長めでしたが、そこは御剣の弱さの表れのように感じられました。

08. 逆転裁判4 法廷組曲
4は、世間的には賛否両論(というか、否の方が多い印象)ですが、個人的には結構好きなタイトルで何周もプレイしました。
そのため曲も好きだし、かなり記憶に刷り込まれていたりします。
今回はそれらの曲をたっぷりと聴けて、ゲームプレイ時を懐かしむ気持ちと楽しかった記憶などを思い出しながら鑑賞しました。

というか、4は意外と良曲が多かったんだなぁ、と今回の演奏会で改めて聴いてしみじみ感じました。
他のタイトルよりも突出して何回もプレイしているためか刷り込まれ率が高いらしく、「こんな曲、あったなぁ」や「あ、この曲もやるのか」と懐かしく感じることが多かったです。

冒頭の「逆転裁判4・開廷」がオーケストラアレンジ盤のままだったので、そのまま「王泥喜法介 ~新章開廷!」に突入するのではないかと思いましたが、さすがにそっちへは流れませんでした。
「王泥喜法介 ~新章開廷!」が聴きたかった身としては、少々残念だった気もします。

10. 大江戸戦士トノサマン
「続・大逆転裁判組曲」後に舞台袖に引っ込んだ栗田氏が、再び登場するもすぐに足を止めて、再び舞台袖へ。
栗田氏のアンコール恒例の演出かな、と思ったら、今度は見覚えのある白いクラッチバッグを手に登場。
その中から取り出したるは、これまた見覚えのあるメタルキャップボールペン。
そして、そのボールペンを指揮棒にして演奏を始めました。
栗田氏がお茶目な上にサービス精神旺盛ということは、過去に栗田氏が指揮した演奏会で知っているはずでしたが、まさかそこまでやってくれるとは思いませんでした。
さすがはアンコール。いいぞ、もっとやれ。

演奏の迫力は言わずもがなで、さらに観客席から自然と手拍子が沸き起こったため、会場全体に一体感がありました。
さすがはみんなのヒーロー・トノサマン。

ところで、数多の演奏会で手拍子が起こる度に少し気になっていたのですが、観客席からの拍手って奏者側にとっては嬉しいものなのでしょうか、それとも邪魔なものなのでしょうか。
ステージ近くで鳴らした音と、ステージから遠く離れた位置で鳴らした音とでは、例え同時に鳴らしてもステージに到達するタイミングがズレるので、手拍子にテンポを狂わされることはないのかなと常々疑問に思っていました。
観客としては一体感があって盛り上がれるのですが、奏者の邪魔はしたくないという気持ちがあるので、少し躊躇いもあったりします。
奏者の方々の本音としてはは、実際のところどうなのだろう。

ちなみに、この曲の終演後のカーテンコールで、真っ先に竹本さんが小走りに登場してきて、栗田氏に土下座していました。
1回目のトークで無茶振りをかましたら、それがオーラスで実現してしまったことへの謝罪でした。
でもまぁ、アンコールだったし、トノサマンだったので、ボールペンで指揮もアリだったと思います。
トークからの流れも含めて面白かったから、個人的には全く問題なし、オールOKでした。
「大江戸戦士トノサマン」らしい、なんでも受け入れてしまう懐の大きさも、この曲の魅力なのかもしれません。

コメント

この記事へのコメント


コメントを投稿する


トラックバック

この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック