[ゲームRev] 最悪なる災厄人間に捧ぐ

PS4で発売されたテキスト型ADV「最悪なる災厄人間に捧ぐ」(以下、さささぐ)をトロフィーコンプリートしました。

ケムコ作品をプレイしたのは、本作が初です。
スマホゲームで会社名を度々目にしていたためか、「オーソドックスな買い切りタイプのゲームを低価格でスピードリリースするゲーム会社」というイメージがありますが、これまで琴線に触れる作品があまりなくて、一作もプレイしたことがありませんでした。

それなのに、本作に限ってプレイしてみようと思った理由は、直感とタイミング。
ファーストコンタクトは、発売直前にファミ通.comに掲載された作品レビューでした。
そこで知った世界観やシナリオから「これは、俺に合う作品なんじゃないか?」と興味を持ち、価格の安さ(DL版で3,000円)に「これなら即決でも買えそう」と皮算用しつつ、ちょうどがっつりしたシナリオのテキスト型ADVをやりたい気分だったことも重なって、あとはもうPS Storeで「購入」ボタンをポチるまで一直線でした。
そんなわけで、プレイしてみた次第です。

ゲームスタイルは、オーソドックスなテキスト型ADV。
テキストを読み進めつつ、途中で出てくる選択肢を選んで、条件次第でシナリオ分岐、という感じです。
マルチエンディング形式ですが、シナリオ分岐のフラグ管理が単純なので、それほど苦労せず、色々なエンディングにたどり着けます。
ある1つのエンディングだけやや解りにくかったですが、他はそうでもなく。
といっても、その”あるエンディング”だって、ゲームにある程度慣れていないと「どこだ?」ってなるかもしれませんが、テキストADVの勘所を掴んでいる人であればすんなりたどり着ける程度です。

そんな感じなので、自力トロコンが容易でした。
というか、今回は珍しく自力でコロコンしました。

ゲーム画面をパッと見た感じではあたかもギャルゲーのようですが、実際にプレイしてみたらギャルゲー要素はほぼありませんでした。
なにしろ、ヒロインは(一応)1人しかいないので、選択の余地がありません。

で、シナリオについてですが、個人的にはとても面白かったです。
ネタバレにならない程度に話のあらすじを記すと、「人の姿が見えない&人の声が聞こえない状態になってしまった主人公・豹馬が、他人から認識されなくなってしまった透明人間の少女・クロと出会い、協力し合いながらともに苦難を乗り越えていく」という感じ。
これだけならほのぼのしてそうに思えますが、開けてびっくり、結構シビアでした。
豹馬やクロのハンディキャップが想像以上に重くて、中途半端な豹馬はもとより、完全な透明人間のクロを通じて「透明人間って、こういうデメリットがあるのか」と突き付けられた気分です。
これまでいくつかのフィクションで見てきた「透明人間」って、誰にも気付かれずに潜入できたりのぞき見できたりなど、メリットを生かしたものが多かったので、それらとは真逆の負の側面を強調しているのが斬新に感じられました。

また、豹馬とクロのバックボーンもかなり重いです。
ネタバレに触れそうなのであまり深く語れないのがもどかしいのですが、「これはツラい・・・」と絶句するようなシーンがいくつかあります。
そんな数々の苦難に立ち向かっていく豹馬とクロが、最終的にはとても格好良かったです。
特に中盤以降の怒涛の展開は、記憶を消してもう一度やり直したいくらいです。

なお、シナリオ上、多少の残酷シーンが含まれるので、そのへんはちょっと注意が必要かもしれません。
と言っても、それほどあからさまな表現ではないけれど。

世界観については、なぜ透明人間になってしまったのか、クロがいきなり5人に増えたのはどうしてか、など、世界のルールに若干のこじ付けを感じるのは否めません。
が、大体「そういうもんか」で納得できました。
低価格ゲームなので、そこまでがっつりした世界観を求めるのはヤボというものです。
そんなことより、豹馬とクロの切なくも奮闘する姿を応援するゲームだと思いました。

テキスト量は、めちゃくちゃ膨大です。
正直、舐めていました。
価格が安いから大した量ではないだろうと高をくくっていたのですが、とんでもなかったです。
価格以上のテキスト量です。
ストーリーは面白いし、ボリュームたっぷりだし、この作品、コスパが良過ぎます。

テキスト量が膨大な代わりに、演出面はやや弱い感じがしました。
が、これに関しては、世界観の設定の勝利なのではないかと思います。
基本的に主人公・豹馬の視点で描かれる本作。
人の姿が見えない、人の声が聞こえない豹馬にとって、唯一クロだけは姿と声を認識できる。
つまり、クロの声と絵の素材さえあれば、大半はそれで十分。
下世話な話だけど、そこでコストが抑えられたことで低価格リリースが可能だったのではないかと。
そういう意味で、世界観の設定の勝利だと思いました。

ちなみに、収録されたボイスと絵の9割はクロが占めているんじゃないか、というくらい、クロ大活躍です。
クロの表情差分などのバリエーションは、ものすごく豊富です。
そんなにあるのかよ、というくらい豊富です。

演出と言えば、色の使い方の工夫が上手いと思いました。
詳しくは言えないけれど、メッセージ枠の色の使い方に一工夫あって、それがとても面白い使い方でした。
また、それが中盤以降で重要になってくるのも、良い演出でした。

一風変わった”透明人間”たちの織り成す、重厚な人間ドラマが描かれた本作。
とてもボリューム感たっぷりで、最後まで楽しめた作品でした。
完全新作の割に安価だったのであまり期待せずプレイしましたが、価格以上の面白さで、良い意味で裏切られました。
小難しい操作は必要ないので、手ごろな価格で手軽に重厚なシナリオを楽しみたい方にオススメです。

これを言わないと追われないので、最後に一言。
うちのクロが一番可愛い。可愛いは最強。正義であり、最強。

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