[GMEV] MUSICエンジン 第八回演奏会

8月17日(土)に、ゲーム音楽を弦楽+木管の小規模オーケストラ編成で演奏する楽団「MUSICエンジン」の8回目となる演奏会が開催されたので、行ってきました。
会場は、三鷹市芸術文化センター 風のホール。
14:00に開演し、16:05に終演しました。

■オール「イーハトーヴォ物語」プログラム
台風一過の影響による猛烈な暑さの中、三鷹駅から会場のホールまで徒歩15分の距離。
どうも今春から体調が優れなくて日々あまり食べておらず体重激減真っ最中、という自己管理能力の欠如も影響していたと思いますが、演奏会当日は運悪く命の危険を感じるほどの暑さ。
あまりの暑さで「あつい・・・あつさでしねる・・・」と飛びかける意識を必死で繋ぎ留めつつ亡者のようにフラフラしながら、なんとか会場に到着できました。
駅から徒歩10分以上の距離に会場がある真夏の演奏会は、社会人の経済力を発動させ、大人しくバスかタクシーを利用した方が良いかもしれません。次回からそうしよう。

そんな前置きはさておき。
今回のMUSICエンジンは、オール「イーハトーヴォ物語」プログラム。
まさかの「イーハトーヴォ物語」オンリーに、Twitterで初報を目にした時は「・・・はえ?」と変な声が出ました。
SFC時代(1993年発売)の作品が、26年の時を経たこのタイミングで、しかし作品自体はマイナーで、OST全曲を演奏しても作品単体で演奏会が成立するほど尺が長くないのに、え、どういうこと? と大混乱。
しかし、常にハイクオリティな演奏を奏でる信頼のMUSICエンジンが手掛けるとあっては、行かないわけにはいきませんでした。

ちなみに、自分はゲーム未プレイです。どんなゲームなのかすら、実は知りません。
ただ、OSTとDL販売していた「組曲 イーハトーヴォ物語 ピアノ版」は持っているので、曲だけは知っています。
確か「PRESS START 2012」で演奏された「イーハトーヴォ賛歌」が最初の出会いで、その時に一発で惚れ込み勢いのままOSTを購入。
ピアノ版も、収録曲にシンフォニック・アレンジ版「イーハトーヴォ賛歌」があると知って、無意識のうちにポチッていました。
それくらい「イーハトーヴォ賛歌」が大好きで、今回の本命もその曲でした。

■優しくノスタルジックで、旅情感のある調和と旋律
楽団の編成は、小規模のオーケストラというか、大規模のアンサンブルというか。
楽器編成で言えば、

・弦楽器4種(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)
・木管楽器4種(フルート、オーボエ、クラリネット、バスーン)
・ホルン
・パーカッション
・ピアノ
・ハープ

という形式でした。
フルオケからホルン以外の金管楽器を抜いたような形です。
曲によっては、チェンバロや鍵盤ハーモニカ、おもちゃのラッパなども登場していました。

MUSICエンジンは、音楽を生業とされているプロの方々が有志で集まって結成された楽団。
そんな総勢25名のメンバーによって奏でられた「イーハトーヴォ物語」は、とても優しくて、ノスタルジックで、旅情感を感じさせる演奏でした。
ゲーム音楽と言うと、バトル曲でバーンと熱くたぎったり、泣きメロで全力で泣かせにきたりと、そういう派手さを伴うことが多いものです。
しかし、今回はそういうものはほとんどなくて、ひたすらに優しい。
音色も旋律も調和も、穏やかに爽やかに流れるような風のよう。
昔を懐かしみつつ心が温かくなるような、そんな優しさに溢れていました。
派手な曲も泣きメロも好物だけど、こういう優しい演奏会もいいなぁ。心が落ち着く。

音楽で生計を立てている方々の演奏なので、演奏自体はプロ級。
音楽ド素人の自分が言うのも何ですが、問答無用で上手いです。
いや、上手いというレベルすら越えて、音へのこだわりをとても強く感じるほどです。
その上、演奏したくてしているという方々ばかりなので、作品愛もすごいです。
MUSICエンジンの演奏会ではいつも感じることなのですが、プロ級の技術力で、作品愛をたっぷり込めて演奏すると、派手さは無くてもこんなに素晴らしい演奏になるのかと、今回も感銘を受けました。

そんな素晴らしい演奏のおかげで、「イーハトーヴォ賛歌」以外の楽曲も、なんとなく自分の中に落ち着いた感じがしました。
これまでOSTやピアノ版を聴いていても、「イーハトーヴォ賛歌」以外の楽曲の印象が薄くて、耳に入ってもそのまますり抜けていってしまっていました。
それが、今回の演奏会を経たことにより、「イーハトーヴォ賛歌」以外の楽曲の素晴らしさにも気付けて、記憶への定着化ができたような気がします。

■編曲はほぼOST準拠、一部未収録曲を含めたメドレーあり
編曲は、概ねOST準拠だったと思います。
ゲーム未プレイで、OSTとピアノ版の楽曲しか知らない身なので、あまり確かなことは言えませんが。
ただ、自分の記憶に残っていた曲とのズレは、あまり感じませんでした。
そのため、曲が次々と演奏される度に「あー、こんなメロディの曲あったあった!」とワクワクしながら、ずっと心地良い音の流れに身を任せていました。

一部楽曲では、OSTのトラック15にあるSFC音源版メドレーでしか聴けない曲名不明の曲が組み込まれ、メドレー形式で演奏されました。
曲名不明なので、プログラムには記載されていません。
SFC音源版はあまり聴き込んでいないため、曲名不明の曲では「こんな曲あったっけ?」と思いつつも、しかし他の曲から浮くということもなく。
すんなり「あ、これ良い曲だな」とストンと入ってきた感じがしました。

■演奏とトークによるサンドイッチ構成
演奏会全体の構成は、演奏とトークで半々という感じでした。
他の演奏会より、トークが多めだった印象です。
まぁ、「イーハトーヴォ物語」はOST収録曲を全曲演奏してもそれほど尺が長くないので、トークがないとものすごいボリューム不足になっていたと思うので、これは致し方ないというか、むしろたまにはアリかなと思いました。

トークは、「イーハトーヴォ物語」の作曲家である多和田吏氏と、MCの尾酒粕行さんによるインタビュー形式で進行。
次に演奏する曲はゲームのどういうシーンで流れる曲か、そのためどういうイメージで作曲したのか、という内容でした。
特に前者の説明がとても詳細で、ゲーム未プレイの身としてはとても助かりました。
トークの内容を踏まえつつ演奏に耳を傾けていたら、容易に情景を思い浮かべることができました。

どの曲をどんなイメージで作曲したか、という方の内容は、実はあまり覚えていません。
すごくこだわりを持って作曲されていて、音楽家ってすごいなー、と感心した覚えはあります。
小並感丸出しで申し訳ないのですが、ずっと「なんか、すごい」が頭の中で渦巻いていました。

全体的には畏まったものではなく、開発当時の思い出話や作曲の方針、時々爆弾発言が飛び出したりと、ユーモアを交えた楽しいトークでした。
多和田氏がすごく気さくによく喋られていたのも、印象的でした。
作曲家という単語から、もっと怖いというか気難しいイメージを抱いていましたが、まさかの真逆。
トーク中は、ものすごく熱く語るお喋りなおっちゃん、という印象を強く受けました。
ただ、後で気付いたことなのですが、熱く語る姿から、それだけに「イーハトーヴォ物語」が多和田氏にとって特別で、思い入れの強い作品なのだろうなぁ、という想いを感じました。

トークとは若干外れるのですが、MCの尾酒さんの声が、「イーハトーヴォ物語」の主人公(パッケージイラストの男性)のイラストからイメージしていた声と、ものすごくピッタリ一致。
なんかこう、凡庸だけど素朴な声質に、瞬間的に「パッケージで見たことある声だ!」と、よくよく考えれば我ながら意味不明なことを思ったほど。
それくらい、声とイラストのイメージが一致していました。

自分の席がかなり前方の中央付近だったので、MCの尾酒さんが初登壇されたとき、台本を持つ手が震えているのが見えて、思わず心の中で「がんばれっ!」と手に汗握って応援していました。
演奏会が進むにつれて、震えがみられなくなっていきましたが。
司会進行、とても上手だったと思います。

なお、ロビーでは物販コーナーがあり、CD版「組曲 イーハトーヴォ物語 ピアノ版」の先行販売を行っていました。
MUSICエンジンの公式サイトに収録曲目リストが掲載されているのですが、それを見た限りでは、DL版に「カエルの親分」を追加して、シンフォニック・アレンジ版「イーハトーヴォ賛歌」を抜いた感じなのでしょうか。
DL版を持っているのでCD版の購入は見送ったのですが、今にして思えば買っておいても良かったかなと、若干後悔しています。

■演奏会前にあった気遣いへの感謝を込めて
この際なので、演奏会前のちょっと嬉しかった気遣いについても少し。

今回の演奏会、「イーハトーヴォ賛歌」を聴きたいが為に反射的にチケットをゲットしたのですが、チケット取ったもののゲーム未プレイの自分が行って良いものかどうかという悩みも心の底にずっと燻っていました。
箱は大きくないし、俺なんかが行くより、もっと熱心なファンが行った方が良いんじゃないかと思うこともしばしば。
そんな中、「よし、行こう!」と前向きになれたのは、TLに流れてきたのコントラバスの橋本さんのTweetでした。







何気ないTweetだったかもしれませんが、このTweetが自分の中で燻っていた迷いを吹き飛ばしてくれた気がしました。
なんかこう、「あ、行ってもいいんだ」と認めてもらえたような、救われたような、そんな気分。
このおかげで、心置きなく迷いなく演奏会に行くことができました。

■感想まとめ
オール「イーハトーヴォ物語」という非常にレアな演奏会でしたが、優しさと懐かしさがたっぷり込められた演奏が聴けて、多和田氏の思い入れたっぷりの熱いトークが聞けた、とても濃厚なひと時でした。
音色的にも、空気感的にも、そしてゲーム未プレイにも、ずっと優しさで包み込んでくれていたような、そんな演奏会でした。
こういう派手さのない優しさオンリーの演奏会も、たまには良いなぁとしみじみ実感。
「イーハトーヴォ物語」だけのプログラムは今後もう二度とないかもしれませんが、そんな稀有な機会に出会えたこと、演奏会に行けたこと、優しさに触れることができたことに感謝してもしきれません。
作曲者の多和田氏、演奏者の方々、スタッフのみなさん、本当にありがとうございました。


これより下の追記は、今回の演奏会のプログラムと印象に残った曲の感想になります。



プログラムは次の通りです。
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01. イーハトーヴォ賛歌
02. 街
03. カエルの親分
04. 少年の日
05. 海をみつめて
06. ある商人の一日

※休憩+トークコーナー
 トーク中に「月に向かって」の演奏あり

07. 音楽祭
08. 雪景色 ~ スノーフレーク
09. 時空を越えて~回想

[アンコール]
10. 旅の日記
-----

これより下は、印象に残った曲ごとの感想になります。

01. イーハトーヴォ賛歌
本命きたーーーーーっ! 俺、大勝利っ!!
開始3分で元を取りました。すこぶる満足です。

原曲ではサビから始まるこの曲ですが、その前に聴き覚えのあるイントロがあったので、ベースはOSTではなくシンフォニック・アレンジ版でしょうか。
途中のコントラバスのピッチカートと、それに続いたオーボエの調べが本当に優しくて、ほっこりしました。
この演奏の後のトークで多和田氏が「風をイメージした」を仰っていたのを聞いてから思い返すと、なるほど納得。
言われてみると、すごく風を感じるような気がします。

トークでも触れられていましたが、「謎の常連」がパワーワード過ぎました。
ゲーム音楽ファンによるゲーム音楽ランキングの存在は知っていましたが、「謎の常連」と呼ばれていることは、このトークで初めて知りました。
しかし、「謎の常連」とは、言わんとしていることが理解できるだけに言い得て妙w

02. 街
演奏を聴いていて、なんとなく、ピアノの音色が水のせせらぎを、他の音色が風の流れや雄大な大地を表現しているように感じました。
降り立った駅から川沿いに歩いていくと、突然開けた高台に出て、そこから見渡す限りに連なる雄大な山々と、その山懐に広がる街並みを望む・・・までが、ふっと脳裏にイメージとして浮かびました。
なんかこういう、想像力(妄想力)を良い感じに刺激するドラマティックな楽曲と演奏、すごくツボです。とても良い演奏でした。

03. カエルの親分
序盤のヴァイオリンとチェロのデュオによる演奏のノスタルジック感が、とてつもなく半端なかったです。
演奏会全体がノスタルジック満載でしたが、一番それを強く感じたのがこの演奏だったように思います。
後のトークで判明したことですが、この序盤に演奏された曲が、SFC音源メドレーにしか収録されていない曲名不明な曲だったそうです。なんと勿体ない。

そんなノスタルジックさから一転、「カエルの親分」は原曲に負けないコミカルな演奏。
おもちゃのラッパから、パーカッションの「ポゥン↑」という破裂音(?)まで、再現性がとても高かったです。
フルートがあんなにパッキパキな音色を出せることも、ここで初めて知りました。あんな音、出せるのか。プロすごい。

06. ある商人の一日
中盤のチェンバロ以降が、まさにバロック音楽。
トークで多和田氏が「バロック音楽を意識した」を仰られていましたが、よくよく聴いてみれば確かにバロック音楽でした。
チェンバロに弦楽器のアンサンブルなんて、まさにそれ。
すごく、たまらない格好良さでした。
なにこれ超格好良い。ヴィヴァルディの組曲「四季」が好きなら、これはハマる。

特に、チェンバロのソロが格好良かったです。
流れるようなチェンバロ連打の無双感から迸る迫力と言ったら、もう。
生演奏の迫力と相まって、耳が釘付けになりました。これは良いチェンバロ。

07. 音楽祭
まさに音楽祭! まごうことなき音楽祭!
西洋風の音楽祭といって想起されるものにとても近い、ドンチャン騒ぎな雰囲気でした。
しかも、それが聴いていてとても楽しかったです。
小学校でお馴染みの鍵盤ハーモニカが、まるでアコーディオンのように響き、それがまた良い雰囲気を醸し出していました。
音楽祭と言えば、アコーディオンは欠かせないですよね。

と、そんなドンチャン騒ぎだけで終わるかと思ったら、終盤にチェロのソロ演奏。
後のトークによると、「セロ弾きのゴーシュ」をモチーフにした、ゴーシュのアンコールをイメージしたソロ演奏だったようです。
このソロを担当されたのが大澤久さん。
ステージ中央前方に出てこられて、見事なチェロのソロを演奏されました。
大澤さんのチェロの音色、演奏する姿、考察の深さがめっちゃ大好物な自分にとっては、それだけで「はわわわぁぁぁぁぁ!!」と言葉にならないほどに大歓喜。
それを前方席の、手が届きそうな位置で聴けただけで、もう、ほんともうね。
しかも、鬼気迫るような素晴らしい演奏で、本当にもう、感動しかないです。

ちなみに、この演奏の後に大澤さん自ら曲と演奏について音楽的な考察を語られていましたが、音楽ド素人かつ宮沢賢治もド素人の自分には1割も理解できませんでした。
きっと理解できてたらものすごく楽しかったに違いないだけに、なんか悔しい。音楽理論、嗜み程度でも少しは齧っておくべきか・・・。

09. 時空を越えて~回想
ピアノは、多和田氏による生演奏。
トークを聞いていた印象では「よく喋るおっちゃんだなー」と大層失礼なことを思っていましたが、この演奏で印象が一変。
ピアノを前にされた途端、多和田氏のオーラというか雰囲気がガラリと変わったことに、まずビックリしました。
そして、その指先から奏でられたピアノの音色が、とても柔らかくてドラマティック。
「イーハトーヴォ物語」の終りを飾るに相応しい、感動を覚えたほどの演奏でした。
と同時に、「これが作曲者のイメージしている本来の曲の姿か」とも思いました。
やはり本家はすごい。深い感銘を受けました。
作曲者自ら演奏される場に居合わせられた奇跡と、その場を提供してくださったMUSICエンジンには、心の底から感謝を伝えたいです。ありがとうございました。

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